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第37話:データ捏造事件

2000年代初頭の頃の出来事だったと記憶している。当時のS電子の携帯端末事業の主力は日本ではCDMAーONEと呼ばれシステムで韓国国内向けCDMA携帯電話が成功を納めていた。

そんな中、我々の日本研究所にも携帯端末を更に小型化するため、超小型アンテナの研究開発依頼の打診を頂いたのであった。

携帯電話に使用されるアンテナの形状は端末の機構デザインによって決定され、アンテナ性能はアンテナを搭載するスペースの体積によりほぼ決定される。アンテナ体積は通常CC(ミリリットル)で表され、当時は約3.5CC程度のサイズが主流であった。

しかしS社の要求仕様を聞いて見ると、なんとアンテナ体積が1.5CC程度で現行の性能を満足したいと言う無茶な要求であった。デザイン設計サイドから見ると譲れないアンテナ体積であり、何とか要求内でアンテナ性能を満足させてくれと言う。消費者受けするデザインの端末の売れ行きは著しく、まるでファッション業界のようだなどと笑い話にしていたものだ。

但し、S社内のアンテナ開発チームが事前検討した結果からも要求仕様の実現は困難だろうと言う意見があり、日本に依頼すると同時に念の為社内開発チームでも同一テーマを並行して推進する事にしたいと言う話であった。

見方を変えれば日本研究所の技術力を試されている様でもあり、日本側でも綿密な事前技術検討の結果、要求仕様達成は難しいが肉薄はできるだろうという見通しの元、依頼を受託することにした。売られた喧嘩は買うのである。

当時のS社のアンテナ開発チームの技術責任者はH首席研究員で、彼は以前からアンテナ関連の技術ミーティングには顔を出し日本語も流暢な事から親しくしていた。彼がS社におけるアンテナ開発の技術責任者の立場であり、実質的にはアンテナ部品を量産納入する業者が開発するにしても、採否決定できる立場にあった。

さて、日本での数か月の開発期間が過ぎ苦労の末にやっと満足出来るアンテナが仕上がったので、事前に開発サンプルと日本研究所での測定評価結果をH首席に提出した後に我々が韓国事業所に出張して開発結果報告会を開く事となった。

当日は日本研究所の駐在員が気をまわしてくれたらしく、当時のCDMA端末の事業担当役員であるT常務も含めた担当者達に開発結果を報告することになったのだが、肝心のH首席の姿が見当たらない。

我々は事業部の要求仕様は完全には満足できないけれども、実用上差し支えないレベルのアンテナ性能を確保する事が出来たと多少胸を張って説明したのだが、T常務は「H首席からは日本研究所の開発したアンテナの性能はとても使い物にならないレベルだと聞いている」と明らかに我々の説明を信用していない。

日本研究所での測定評価データに誤りがあるはずもなく「それでは何か測定上の行き違いがあるかも知れないので、韓国事業所での測定データを見せてくれ」と多少憮然としてお願いすると、さすが技術者出身のT常務はすぐにH首席に電話を掛け、すぐに事業所内での測定結果とサンプルを持ってきてくれと命じた。しかし中々H首席が現れないのでT常務もさすがにイライラして再度電話し「いいからすぐに来い!!」と彼を会議室に呼び付けた。

彼が持参した測定データは日本研究所で測定したデータとほぼ一致するデータであり、また日本研究所から提出した性能実証用の試作サンプルは見る影も無くバラバラにされていたのであった。

要するに我々日本の開発チームの結果を補完する意味で韓国本社内のH首席を責任者とする開発チームであったが、性能的に日本チームの開発結果に追いつく事が出来ず、面目を保つ為に我々のサンプルを分解して研究したが結局追いつかず結果が発散してしまった様だ。さらに実証測定した結果を「とても使えない」と嘘の報告を上げていたらしい。思いがけず我々がT常務に直接報告することになってしまい、彼の嘘が発覚するのを恐れて会議にも出席できずオロオロしていたらしい。

顔を真っ赤にしたT常務から厳しく叱責されたH首席は、涙目でひたすら耐えるしかなかったのである。

日本では全く考えられない話であるが、T常務から「今回の事はすまなかった、韓国まで報告に来てくれて有難う」と労われて、我々はH首席に対する怒りよりも呆れ果ててしまって、薄笑いを浮かべながらウンウンと頷くしか無かったのである。

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ジャンル : 政治・経済

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通信機器の高周波回路・部品の研究開発に携わって来た技術屋のブログです。現在は個人経営の技術コンサルタントを営んでおります。
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最近「ドローン」の無線応用技術についてスタディーを始めました。自動配達の為の自律飛行を補助する衝突防止レーダ等、興味深い分野です。
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​「ドローン」墜落事故が散見される中、現在は「航空法」に依って規制され、ラジコンによる「目視飛行」が許可されている様ですが、安全飛行の為には無線通信の確保が大前提となります。
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またRFD-Labホームページに掲載した技術解説記事のPDF抜粋も併せて掲載しますのでご興味のある皆さんは参照して下さい。

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