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第15話:韓国技術者転職事情

S電子の人事制度には日本の国家公務員いわゆるキャリア組に似た人事慣習がある様だ。すなわち同期入社した幹部社員はその後の昇進で基本的には同時期に昇進し昇進レースに破れた社員は自ら身を引かなければならないと言うあの制度である。勝ち続ける社員は良いが負けた社員は家族の生活もあり何とかしなければいけない。

しかしそこはよくしたもので、やはり日本の公務員天下り制度の様な形が在るらしい。例えばS電子に出入りする部品業者等の納入業者にとってはそのような理由で退職する人材は喉から手が出るほど欲しいのである。彼らはS電子内に強力な人脈をもっているうえ退職後S電子を顧客とする事に何のためらいも無い。S電子に残った社員たちもむしろ再就職した彼らを厚遇するような雰囲気さえ見て取れるほどだ。

そんなわけでそうした転職者達のS電子社員達へのロビー営業が夜の町に延々と続くのである。

ただしライバル会社のL社への転職は簡単ではないようだ。昔GSM携帯電話の黎明期にS電子携帯電話開発グループの一つがグループごと開発中の携帯電話設計情報の一切を持ち出してL社に転職しL社のGSM携帯電話事業を立ち上げたという話は余りにも有名である。

それが法律の設立の一端になったかは定かでは無いが、現在の韓国国内では技術者が同一の職種の会社に転職する事を一定期間法律で禁じているらしい。従ってライバル会社へ転職する技術者はダミー会社に一度身を寄せたり、大学の研究室で喪が明けるのを待ったりして一定期間待って転職しているのである。

話は変わるが、日本国内でも退職時には秘密保持誓約書やライバル企業へは一定期間就職しないという誓約書を書かせる会社があるが、退職者に対する一種の恫喝にはなるかもしれないがあまり実質的な効果は無いだろう。

技術者がその会社で重ねた実績や能力はすべてその技術者本人の頭の中にあり、それを持ち出すなと言うことは首をおいていけということに等しいからである。

特にセラミックスや電池等の素材絡まりの電子部品研究開発者の場合などはその傾向が強いだろう。基本的な成分構成は誰でも判るが、特性を決定づける微小成分は全くのノウハウであって研究開発者本人の頭の中にしか無いからである。

何れにしてもどれだけ良い技術者を社内に留めておけるかがその会社の持つ大きな実力となるのであろうし、日本企業で永年こつこつ研究してきた研究技術者を簡単に好待遇で引き抜けるのももう一つの企業の実力と言わざるを得ない。

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通信機器の高周波回路・部品の研究開発に携わって来た技術屋のブログです。現在は個人経営の技術コンサルタントを営んでおります。
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最近「ドローン」の無線応用技術についてスタディーを始めました。自動配達の為の自律飛行を補助する衝突防止レーダ等、興味深い分野です。
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​「ドローン」墜落事故が散見される中、現在は「航空法」に依って規制され、ラジコンによる「目視飛行」が許可されている様ですが、安全飛行の為には無線通信の確保が大前提となります。
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またRFD-Labホームページに掲載した技術解説記事のPDF抜粋も併せて掲載しますのでご興味のある皆さんは参照して下さい。

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